蔵前から未来を考える
明日を切り拓くデザインの力
アッシュコンセプトが本社を構える東京台東区蔵前に、各界からゲストをお招きして「未来を考える」トークイベント「Kuramae DESIGN HAUS(クラマエ デザイン ハウス)」。代表の名児耶秀美が直球で投げかける問いは、ときに、思いもよらない方向へと話を展開させます。日々の暮らしから地球規模の問題まで、さまざまな角度で交わされる対話は、デザインの新たな可能性を探るきっかけになるはずです。
編集・文 高橋美礼
蔵前から未来を考える 明日を切り拓くデザインの力
アッシュコンセプトが本社を構える東京台東区蔵前に、各界からゲストをお招きして「未来を考える」トークイベント「Kuramae DESIGN HAUS(クラマエ デザイン ハウス)」。代表の名児耶秀美が直球で投げかける問いは、ときに、思いもよらない方向へと話を展開させます。日々の暮らしから地球規模の問題まで、さまざまな角度で交わされる対話は、デザインの新たな可能性を探るきっかけになるはずです。
編集・文 高橋美礼


Date
2023年11月17日[金]18:30-19:30
Guest
株式会社 アクタス 代表取締役会長
休山昭さん
ヨーロッパからの輸入を中心に家具、テキスタイル、アパレル、インテリア小物全般の販売や、レストラン、カフェの運営なども手掛ける。「衣食住」生活にまつわるすべてのカテゴリーを総合的に提案するライフスタイルカンパニーとして「上質で、丁寧な暮らし」を様々な形態で届けている。

Date
2023年11月17日[金]18:30-19:30
Guest

株式会社アクタス
代表取締役会長
休山 昭さん
ヨーロッパからの輸入を中心に家具、テキスタイル、アパレル、インテリア小物全般の販売や、レストラン、カフェの運営なども手掛ける。「衣食住」生活にまつわるすべてのカテゴリーを総合的に提案するライフスタイルカンパニーとして「上質で、丁寧な暮らし」を様々な形態で届けている。
https://www.actus-interior.com/
Event Report
Kuramae DESIGN HAUSの第2回にお迎えしたゲストは、日本を代表するライフスタイルストア「ACTUS」を中心に衣食住のすべてにまつわる商品とサービスを展開する企業、アクタスの代表取締役会長・休山昭さんです。
「パーパス・ブランディング経営」と題したプレゼンテーションでトークはスタートしました。冒頭に引用されたのは森鴎外の名句、「日の光を籍りて(かりて)照る大いなる月たらんよりは、自ら光を放つ小さき燈火(ともしび)たれ」。大きな力に頼るよりも、身を燃やし、自分の力で輝くこと。その言葉のようにアクタスは1969年の創業以来、日本のモダンインテリアに新風を起こし、家具選びや家づくりの楽しさを広める先駆的な光であり続けています。
1ドル360円の固定相場制だった創業当時、7人の創業メンバーの高い志を貫き、まだ一般に普及していなかったヨーロッパ家具を国内で紹介することに始まり、伝統的な婚礼家具に替わるものとしてオリジナル家具の製造をスタートさせてきた道は、常に平坦だったわけではありません。1990年代後半には、「モノを売るのではなくスタイルを売る」という思想から、製品カタログを廃止して独自のスタイルブックの刊行へと大きく舵を切りました。スタイルブックにはさみ込んだハガキで得た顧客の要望をリソースとして新スタイルの提案に活用し、子ども向け家具の展開にもつなげています。国内外のエクスクルーシブブランドのインテリア製品を扱うと同時に、2013年に出版した『123人の家』では、普段の飾らない日常の暮らしを撮影した写真が評判となったように、幅広いインテリアの豊かさを伝えることに邁進してきたことがわかります。
2000年からは、環境問題へも意識的に取り組み始めました。修理やサポートを保証する「ロングユース」、有償で引き取りリペアして次の使い手へつなぐ「トレードイン」、そして古くなってしまった家具を、木・布・皮革・ガラスなど素材ごとに分解してチップ化したりアスファルトに練り込んだりすることで再利用する「エコループ」。こうした活動から生まれたエコループストアでは、本来であれば捨てられそうなモノにスポットを当てたマーケットも開催しています。
そして、生活者の立場からスタイルを編集していくライフスタイルストアであり続けるためにどのような信念を共有しているか……。休山さんが考える経営思想については後半、アッシュコンセプト代表の名児耶秀美との有意義なクロストークで、詳しくお話しくださいました。その様子は、ダイジェストでお伝えします。
Event Report
Kuramae DESIGN HAUSの第2回にお迎えしたゲストは、日本を代表するライフスタイルストア「ACTUS」を中心に衣食住のすべてにまつわる商品とサービスを展開する企業、アクタスの代表取締役会長・休山昭さんです。
「パーパス・ブランディング経営」と題したプレゼンテーションでトークはスタートしました。冒頭に引用されたのは森鴎外の名句、「日の光を籍りて(かりて)照る大いなる月たらんよりは、自ら光を放つ小さき燈火(ともしび)たれ」。大きな力に頼るよりも、身を燃やし、自分の力で輝くこと。その言葉のようにアクタスは1969年の創業以来、日本のモダンインテリアに新風を起こし、家具選びや家づくりの楽しさを広める先駆的な光であり続けています。
1ドル360円の固定相場制だった創業当時、7人の創業メンバーの高い志を貫き、まだ一般に普及していなかったヨーロッパ家具を国内で紹介することに始まり、伝統的な婚礼家具に替わるものとしてオリジナル家具の製造をスタートさせてきた道は、常に平坦だったわけではありません。1990年代後半には、「モノを売るのではなくスタイルを売る」という思想から、製品カタログを廃止して独自のスタイルブックの刊行へと大きく舵を切りました。スタイルブックにはさみ込んだハガキで得た顧客の要望をリソースとして新スタイルの提案に活用し、子ども向け家具の展開にもつなげています。国内外のエクスクルーシブブランドのインテリア製品を扱うと同時に、2013年に出版した『123人の家』では、普段の飾らない日常の暮らしを撮影した写真が評判となったように、幅広いインテリアの豊かさを伝えることに邁進してきたことがわかります。
2000年からは、環境問題へも意識的に取り組み始めました。修理やサポートを保証する「ロングユース」、有償で引き取りリペアして次の使い手へつなぐ「トレードイン」、そして古くなってしまった家具を、木・布・皮革・ガラスなど素材ごとに分解してチップ化したりアスファルトに練り込んだりすることで再利用する「エコループ」。こうした活動から生まれたエコループストアでは、本来であれば捨てられそうなモノにスポットを当てたマーケットも開催しています。
そして、生活者の立場からスタイルを編集していくライフスタイルストアであり続けるためにどのような信念を共有しているか……。休山さんが考える経営思想については後半、アッシュコンセプト代表の名児耶秀美との有意義なクロストークで、詳しくお話しくださいました。その様子は、ダイジェストでお伝えします。


トークは休山昭さんのプレゼンテーションでスタート。アクタス創業時から現在まで、失敗と成功を繰り返しながら成長してきた道のりはドラマチックでもあります。
Cross Talk Digest
高橋
休山さん、名児耶さん、ありがとうございました。ここから短い時間ですが、トークのファシリテーターを務めます、高橋美礼です。よろしくお願いします。
すごく充実のプレゼンで、みなさんどこから質問していいか、それくらいのボリュームだったんですけれども、ここはちょっと名児耶さんからも、率直なお話というか、名児耶さんを今ちらって横で見ていると、ポイントポイントでいっぱいメモしてらっしゃるんですよね。きっと休山さんのお話で何かアッシュコンセプトのこれからのヒントになることを掴んだんじゃないかと。今それを少し、タネの状態でお話くださると嬉しいなと思います。いかがでしたか?
名児耶
休山さん、本当にありがとうございました。なぜ僕がアクタスを好きなのか、やっとわかりました。やっぱり“志”があるんですね。儲かればいいというだけの会社はつまらないな、と僕はずっと思っていまして。アクタスのみなさんいろいろな夢を見て、それを実現しているのが素晴らしいですね。休山さんがやってきたことのなかで、一番難しかったのはなんでしょうか?
休山
少し生々しいテーマになるかもしれませんが、よろしいでしょうか。アクタスはもともと、ご存知のように波乱万丈、いろんな時代を経てきましたが、外部から経営層が入ってくることがほとんどでした。僕たちとしては、やりたいことを悶々と思い描いていたんですけど、2008年にアクタスが赤字になってしまった時に、責任を取って経営陣がいなくなったんです。そこで、ぽんっと僕のところにボールを投げてこられて、自分が代表になったわけですけども。赤字ですから、一度、不採算部門をかなり整理した経験があって……。その経緯がなかったら、今のアクタスはないのですけど、その時は一緒に働いてきた仲間もずいぶん減らしましたし……。そういう質問でしたっけ?
名児耶
いや、でもやっぱり、ただ楽しんでいるだけじゃなくて、ちゃんとやるべきことをやって、その上で楽しんできたんだなっていうことを聞けて嬉しいです。ありがとうございます。
アクタスをこれからどうしようかというときに、その時の上司や先輩たちから「休山、お前がやるんだったら、俺たちが全面的にバックアップする」って言われて社長になった、という話を休山さんご本人から伺い、その時から本当に僕はアクタスが大好きになったんですよね。
高橋
休山さんと名児耶さんは、アクタスとアッシュコンセプトという形で、お二方ともいまの日本のライフスタイルを引っ張っていく楽しいブランドを作り続けている点では、近いようで少しずつ違うところがたくさんあるように感じます。経営者としてというのはもちろんなのですが、繋がりというか、どういうところで意気投合したのでしょうか?
休山
何年前になるんですかね。名児耶さんが『インテリアライフスタイル』に出展してブースに立っていらっしゃった時、直接お話を聞いているうちに催眠術のようなものにかけられたんです(笑)。これ、かけられた人は、いっぱいいらっしゃるんですよ。「なんかこの人、昔から知っていた人だな?」って感じてしまって、そこからもうほとんど親友状態ですよね(笑)。
名児耶
いやあ、僕もね、大好きなアクタスの社長がこの方だと聞いてお話してみたら、このエネルギー! すごく忙しいはずなのに、すべての商品の説明を聞いてくれたんですね。休山さんに感じるのはやっぱり、「with Love」でしょう(笑)。今日は多分、もう僕の話なんかより、みなさんから休山さんに突っ込んで聞きたいことがありそうな気がします。


休山昭さんとアッシュコンセプト代表・名児耶秀美とのクロストーク。会場へお越しの方々からも鋭い質問が飛び出しました。
高橋
では、ここにいらっしゃる方々から少しだけ質問をいただきましょう。
名児耶
僕のほうから指名してみます。じゃあ最初は「神戸マッチ」の嵯峨山さん! 蔵前の新参者と言われたりしていますが、今年の9月に蔵前にカッコいいお店を作ったので、みなさんも行ってみてください。
注)神戸マッチの自社ブランドショップ「hibi」は2023年9月1日蔵前にオープン。10分間だけ香りを楽しめるマッチ型のお香は、アッシュコンセプトのショップKONCENTでも人気のプロダクト。https://hibi-jp.com/shop.php
神戸マッチ 嵯峨山さん
貴重なお話ありがとうございました。つらい時の経験がベースになり、「パーパスブランディング経営」という方針をたてて社会と同じ目的を共有しながら実現していくなかで、ファンが増え、アクタス信者さんが増えていくのだろうなと感じました。そういった休山さんの強い思いを、スタッフの皆さんにいかに伝えて、浸透させて定着させていったかということと、理解したスタッフの皆さんがそれをどうやって具体的な行動に移していったのか、ということをお聞きできればと思います。
休山
僕が代表になった当時、最初にあったのは「ビジョナリーカンパニー」。つまり、ビジョンを設定して、そこへ向かうミッションを大切にすること。ミッションというのは、本来は宗教用語ですね。日本語で使命と訳した人は天才だと思うのですが、「命を使って果たす」という意味ですよね。非常に重たい。そういう重たいことを果たすためには、同じ価値観を共有しないとなりません。そのために明確なビジョンというのを設定しています。そこには4つのビジョンがあり、そのビジョンを具体的にどうやって回していくかというエンジンとして、「actus Will」という行動指針を決めてあります。
「will」は未来とか意思という意味で考えていて、このなかに「5人称 」があるんです。まず「自分自身が幸せになろう(I’m)」。それから「お客様をしあわせにしよう(for customer)」、ともに働く「仲間(with staff)」、「家族(to family)」、「社会(for society)」。この「5人称 」を幸せにするために何をすべきかを示す20の行動指標があります。その指標を見て自ら行動するための羅針盤のようなものです。たとえば「It’s my pleasure.」というのは、「お客様のよろこびが、私たちのよろこびです」という意志になる。
つまり、お客さまを喜ばせるためだったらすぐ行動していいよ、という意味でもあります。いちいち店長とか、ましてや本社に稟議書なんか書かんでいいからということです。アクタスにはいわゆるマニュアルはあります。でも時にはマニュアルをはみ出してもいいから自分の個性や想像力を活かしてすぐに行動しようということです。これを小さなリーフレットにして社員は常に携帯していて、それが全スタッフの活動のベースになっています。
名児耶
さて次は、アクタスさんの次を担うんじゃないかなっていう勢いのある経営者、「TISTOU」の平田さん!
TISTOU 平田さん
すみません(笑)。TISTOU(ティストゥ)の平田と申します。アクタスさんには弊社もいろいろとお世話になっておりまして、ありがとうございます。先ほどのお話で、私が一番共感したというか素敵だなと思ったのは、休山さんがどれだけ会社の社員の皆さんのことを思ってケアをされているのかっていうところでした。私自身の悩みも含めての質問になりますが、入社してから皆さんが「actus Will」を共有することで会社の信念まで共有できることは理解するんですけども、たとえば採用の時点で、入社希望の多くの人のなかからどんな人材を見極めていくのか、休山さんとしては、どういった人に来て欲しいと考えているのか、気になりました。
休山
これ僕が代表になってから、今は会長として、特に学生への会社説明会は全部自分で行なっています。もう年間にかなりの回数になるのですが、その際にも学生からどんな人材を望んでいるかという質問がやっぱり出ます。まず僕が答えるのは、自分自身の個性を大切にできる人。「Will」はありますがマニュアルに縛られるのではなく、自分自身の本当の可能性をアクタスという会社で試せる人。ですから失敗はどんどんしなさいっていうことをよく言うんですね。
それともう一つは、お客様の感動に感動できる人。僕は学生時代、ホテルの宴会場で結婚式のボーイのアルバイトしていたことがあります。結婚式の最後に、新婦がお父さんとお母さんに手紙を読む場面がありますよね。僕は仕事しながら泣いていたんですよ、感情移入しすぎて(笑)。 ブライダルの仕事もいいなあ、と思っていたんだけど、やっぱりインテリアが好きだったからインテリアの世界に入りました。お客様にインテリアを提案して、それをお宅に納品するとき立会っていますと、最近では3Dの状態で提案したものがほとんどその通りに納品されていくんですね。そうすると、お客様はやはり感動されるんですよ。中には実際に目をウルウルさせるお客様もいらっしゃって……こんなに素敵になるんだと。
そういうお客様の感動の場に一緒にいられることが、インテリアを扱う素晴らしさかもしれません。もし結婚するお2人の部屋を提案させていただいたら、その後は子供部屋を一緒に考え、その子供が結婚して子供をもったら、孫の部屋を全部用意するからと3世代でご相談にいらっしゃるんですよね。そういう、お客様の世代を渡って続く感動を自分たちが共有できるということは、やはり献身といいますか、お客様に尽くす喜びにつながります。その喜びを共有したいと思う人に来てほしい、というふうによく言っています。
名児耶
ありがとうございます。あと1人は……いまみなさんが長時間座っても、そんなにつらさを感じないこの小さな椅子「I’m Dミニマルチェア」をデザインしてくれたデザイナーが来ていますので、質問してもらいましょう。芝浦工業大学の教授でデザイナーの橋田さんです。
注)「I’m Dミニマルチェア」は岩谷マテリアルから発売中。
橋田さん
ご紹介して頂きありがとうございます。私、多分人生で一番たくさん入ったことのある家具屋が、アクタスさんです。ずっとファンで本当に今日は感激しましたし、お話も本当に心に響きました。天王洲にあるスローハウスへも何回も行ってまして、素晴らしい店舗で、ジビエ料理も美味しいですよね(笑)。質問なのですが、私はアクタスさんの名前がすごく良いと思ってきました。 Act us(アクト・アス)……ですよね? 名前の由来というか、どういうふうに生まれたかをお聞きしたいです。お願いします。
休山
鋭い質問ですね! あのですね、実は初めて社史をまとめるまで全くわからなかったんですよ。よく僕たちが言っていたのは、ご推察のように「Act us」かなとか、中にはちょっとふざけて、「悪がたくさんいる…という意味でアクタス」かな?とか言って笑ってました。改めて社史をまとめたとき、もうすでにご高齢になっていた創業時の方々にインタビューしに行き、僕も知らない話をたくさん聞くことができました。
その中に、ネーミングしたのは私ですとおっしゃる女性がいらっしゃいました。「ACTIVE HOUSE(アクティブハウス)」です、と。ACTIVEっていまは結構使われる言葉ですが、当時はそれほどポピュラーな言葉ではなく新鮮な響きだったようです。でも社名の意味が解明した時が社長に就任したばかりで、とても大変な時期だったので「もっと元気を出せ!!」と先達に背中を押してもらったみたいで勇気が出ました。Act usの方がよかったでしょうか?
デザイナー 橋田さん
いえ、それはシンプルすぎるかなとも思っていたので、いま聞いて感動しました。
高橋
ありがとうございました。まだまだ皆さんのご興味は尽きないと思いますが、そろそろ終わりの時間となりました。最後に名児耶さん、今日この時間を共有した蔵前のみなさまへ、もうひとことお願いします。
名児耶
ありがとうございました。ひとに歴史あり、ではありませんが、企業を支える考え方には学べることがたくさんありました。こうして肩の力を抜いてお聞きできる場から得たヒントを、自分たちも行動に移してみる。そんなきっかけにしたいなと思っています。僕にとってもたいへん勉強になりました。休山さん、どうもありがとうございました。


トークは休山昭さんのプレゼンテーションでスタート。アクタス創業時から現在まで、失敗と成功を繰り返しながら成長してきた道のりはドラマチックでもあります。
Cross Talk Digest
高橋
休山さん、名児耶さん、ありがとうございました。ここから短い時間ですが、トークのファシリテーターを務めます、高橋美礼です。よろしくお願いします。
すごく充実のプレゼンで、みなさんどこから質問していいか、それくらいのボリュームだったんですけれども、ここはちょっと名児耶さんからも、率直なお話というか、名児耶さんを今ちらって横で見ていると、ポイントポイントでいっぱいメモしてらっしゃるんですよね。きっと休山さんのお話で何かアッシュコンセプトのこれからのヒントになることを掴んだんじゃないかと。今それを少し、タネの状態でお話くださると嬉しいなと思います。いかがでしたか?
名児耶
休山さん、本当にありがとうございました。なぜ僕がアクタスを好きなのか、やっとわかりました。やっぱり“志”があるんですね。儲かればいいというだけの会社はつまらないな、と僕はずっと思っていまして。アクタスのみなさんいろいろな夢を見て、それを実現しているのが素晴らしいですね。休山さんがやってきたことのなかで、一番難しかったのはなんでしょうか?
休山
少し生々しいテーマになるかもしれませんが、よろしいでしょうか。アクタスはもともと、ご存知のように波乱万丈、いろんな時代を経てきましたが、外部から経営層が入ってくることがほとんどでした。僕たちとしては、やりたいことを悶々と思い描いていたんですけど、2008年にアクタスが赤字になってしまった時に、責任を取って経営陣がいなくなったんです。そこで、ぽんっと僕のところにボールを投げてこられて、自分が代表になったわけですけども。赤字ですから、一度、不採算部門をかなり整理した経験があって……。その経緯がなかったら、今のアクタスはないのですけど、その時は一緒に働いてきた仲間もずいぶん減らしましたし……。そういう質問でしたっけ?
名児耶
いや、でもやっぱり、ただ楽しんでいるだけじゃなくて、ちゃんとやるべきことをやって、その上で楽しんできたんだなっていうことを聞けて嬉しいです。ありがとうございます。
アクタスをこれからどうしようかというときに、その時の上司や先輩たちから「休山、お前がやるんだったら、俺たちが全面的にバックアップする」って言われて社長になった、という話を休山さんご本人から伺い、その時から本当に僕はアクタスが大好きになったんですよね。
高橋
休山さんと名児耶さんは、アクタスとアッシュコンセプトという形で、お二方ともいまの日本のライフスタイルを引っ張っていく楽しいブランドを作り続けている点では、近いようで少しずつ違うところがたくさんあるように感じます。経営者としてというのはもちろんなのですが、繋がりというか、どういうところで意気投合したのでしょうか?
休山
何年前になるんですかね。名児耶さんが『インテリアライフスタイル』に出展してブースに立っていらっしゃった時、直接お話を聞いているうちに催眠術のようなものにかけられたんです(笑)。これ、かけられた人は、いっぱいいらっしゃるんですよ。「なんかこの人、昔から知っていた人だな?」って感じてしまって、そこからもうほとんど親友状態ですよね(笑)。
名児耶
いやあ、僕もね、大好きなアクタスの社長がこの方だと聞いてお話してみたら、このエネルギー! すごく忙しいはずなのに、すべての商品の説明を聞いてくれたんですね。休山さんに感じるのはやっぱり、「with Love」でしょう(笑)。今日は多分、もう僕の話なんかより、みなさんから休山さんに突っ込んで聞きたいことがありそうな気がします。


休山昭さんとアッシュコンセプト代表・名児耶秀美とのクロストーク。会場へお越しの方々からも鋭い質問が飛び出しました。
高橋
では、ここにいらっしゃる方々から少しだけ質問をいただきましょう。
名児耶
僕のほうから指名してみます。じゃあ最初は「神戸マッチ」の嵯峨山さん! 蔵前の新参者と言われたりしていますが、今年の9月に蔵前にカッコいいお店を作ったので、みなさんも行ってみてください。
注)神戸マッチの自社ブランドショップ「hibi」は2023年9月1日蔵前にオープン。10分間だけ香りを楽しめるマッチ型のお香は、アッシュコンセプトのショップKONCENTでも人気のプロダクト。
https://hibi-jp.com/shop.php
神戸マッチ 嵯峨山さん
貴重なお話ありがとうございました。つらい時の経験がベースになり、「パーパスブランディング経営」という方針をたてて社会と同じ目的を共有しながら実現していくなかで、ファンが増え、アクタス信者さんが増えていくのだろうなと感じました。そういった休山さんの強い思いを、スタッフの皆さんにいかに伝えて、浸透させて定着させていったかということと、理解したスタッフの皆さんがそれをどうやって具体的な行動に移していったのか、ということをお聞きできればと思います。
休山
僕が代表になった当時、最初にあったのは「ビジョナリーカンパニー」。つまり、ビジョンを設定して、そこへ向かうミッションを大切にすること。ミッションというのは、本来は宗教用語ですね。日本語で使命と訳した人は天才だと思うのですが、「命を使って果たす」という意味ですよね。非常に重たい。そういう重たいことを果たすためには、同じ価値観を共有しないとなりません。そのために明確なビジョンというのを設定しています。そこには4つのビジョンがあり、そのビジョンを具体的にどうやって回していくかというエンジンとして、「actus Will」という行動指針を決めてあります。
「will」は未来とか意思という意味で考えていて、このなかに「5人称」があるんです。まず「自分自身が幸せになろう(I’m)」。それから「お客様をしあわせにしよう(for customer)」、ともに働く「仲間(with staff)」、「家族(to family)」、「社会(for society)」。この「5人称 」を幸せにするために何をすべきかを示す20の行動指標があります。その指標を見て自ら行動するための羅針盤のようなものです。たとえば「It’s my pleasure.」というのは、「お客様のよろこびが、私たちのよろこびです」という意志になる。
つまり、お客さまを喜ばせるためだったらすぐ行動していいよ、という意味でもあります。いちいち店長とか、ましてや本社に稟議書なんか書かんでいいからということです。アクタスにはいわゆるマニュアルはあります。でも時にはマニュアルをはみ出してもいいから自分の個性や想像力を活かしてすぐに行動しようということです。これを小さなリーフレットにして社員は常に携帯していて、それが全スタッフの活動のベースになっています。
名児耶
さて次は、アクタスさんの次を担うんじゃないかなっていう勢いのある経営者、「TISTOU」の平田さん!
TISTOU 平田さん
すみません(笑)。TISTOU(ティストゥ)の平田と申します。アクタスさんには弊社もいろいろとお世話になっておりまして、ありがとうございます。先ほどのお話で、私が一番共感したというか素敵だなと思ったのは、休山さんがどれだけ会社の社員の皆さんのことを思ってケアをされているのかっていうところでした。私自身の悩みも含めての質問になりますが、入社してから皆さんが「actus Will」を共有することで会社の信念まで共有できることは理解するんですけども、たとえば採用の時点で、入社希望の多くの人のなかからどんな人材を見極めていくのか、休山さんとしては、どういった人に来て欲しいと考えているのか、気になりました。
休山
これ僕が代表になってから、今は会長として、特に学生への会社説明会は全部自分で行なっています。もう年間にかなりの回数になるのですが、その際にも学生からどんな人材を望んでいるかという質問がやっぱり出ます。まず僕が答えるのは、自分自身の個性を大切にできる人。「Will」はありますがマニュアルに縛られるのではなく、自分自身の本当の可能性をアクタスという会社で試せる人。ですから失敗はどんどんしなさいっていうことをよく言うんですね。
それともう一つは、お客様の感動に感動できる人。僕は学生時代、ホテルの宴会場で結婚式のボーイのアルバイトしていたことがあります。結婚式の最後に、新婦がお父さんとお母さんに手紙を読む場面がありますよね。僕は仕事しながら泣いていたんですよ、感情移入しすぎて(笑)。 ブライダルの仕事もいいなあ、と思っていたんだけど、やっぱりインテリアが好きだったからインテリアの世界に入りました。お客様にインテリアを提案して、それをお宅に納品するとき立会っていますと、最近では3Dの状態で提案したものがほとんどその通りに納品されていくんですね。そうすると、お客様はやはり感動されるんですよ。中には実際に目をウルウルさせるお客様もいらっしゃって……こんなに素敵になるんだと。
そういうお客様の感動の場に一緒にいられることが、インテリアを扱う素晴らしさかもしれません。もし結婚するお2人の部屋を提案させていただいたら、その後は子供部屋を一緒に考え、その子供が結婚して子供をもったら、孫の部屋を全部用意するからと3世代でご相談にいらっしゃるんですよね。そういう、お客様の世代を渡って続く感動を自分たちが共有できるということは、やはり献身といいますか、お客様に尽くす喜びにつながります。その喜びを共有したいと思う人に来てほしい、というふうによく言っています。
名児耶
ありがとうございます。あと1人は……いまみなさんが長時間座っても、そんなにつらさを感じないこの小さな椅子「I’m Dミニマルチェア」をデザインしてくれたデザイナーが来ていますので、質問してもらいましょう。芝浦工業大学の教授でデザイナーの橋田さんです。
注)「I’m Dミニマルチェア」は岩谷マテリアルから発売中。
デザイナー 橋田さん
ご紹介して頂きありがとうございます。私、多分人生で一番たくさん入ったことのある家具屋が、アクタスさんです。ずっとファンで本当に今日は感激しましたし、お話も本当に心に響きました。天王洲にあるスローハウスへも何回も行ってまして、素晴らしい店舗で、ジビエ料理も美味しいですよね(笑)。質問なのですが、私はアクタスさんの名前がすごく良いと思ってきました。 Act us(アクト・アス)……ですよね? 名前の由来というか、どういうふうに生まれたかをお聞きしたいです。お願いします。
休山
鋭い質問ですね! あのですね、実は初めて社史をまとめるまで全くわからなかったんですよ。よく僕たちが言っていたのは、ご推察のように「Act us」かなとか、中にはちょっとふざけて、「悪がたくさんいる…という意味でアクタス」かな?とか言って笑ってました。改めて社史をまとめたとき、もうすでにご高齢になっていた創業時の方々にインタビューしに行き、僕も知らない話をたくさん聞くことができました。
その中に、ネーミングしたのは私ですとおっしゃる女性がいらっしゃいました。「ACTIVE HOUSE(アクティブハウス)」です、と。ACTIVEっていまは結構使われる言葉ですが、当時はそれほどポピュラーな言葉ではなく新鮮な響きだったようです。でも社名の意味が解明した時が社長に就任したばかりで、とても大変な時期だったので「もっと元気を出せ!!」と先達に背中を押してもらったみたいで勇気が出ました。Act usの方がよかったでしょうか?
デザイナー 橋田さん
いえ、それはシンプルすぎるかなとも思っていたので、いま聞いて感動しました。
高橋
ありがとうございました。まだまだ皆さんのご興味は尽きないと思いますが、そろそろ終わりの時間となりました。最後に名児耶さん、今日この時間を共有した蔵前のみなさまへ、もうひとことお願いします。
名児耶
ありがとうございました。ひとに歴史あり、ではありませんが、企業を支える考え方には学べることがたくさんありました。こうして肩の力を抜いてお聞きできる場から得たヒントを、自分たちも行動に移してみる。そんなきっかけにしたいなと思っています。僕にとってもたいへん勉強になりました。休山さん、どうもありがとうございました。


会場へお越しくださったのは、蔵前の元気な経営者やデザイナーの方々。懇親会では、蔵前JPテラス1階にある「TRASPARENTE」によるフードとスパークリングワインを囲んで楽しい時間となりました。
Nagoya’s Opinion


会場へお越しくださったのは、蔵前の元気な経営者やデザイナーの方々。懇親会では、蔵前JPテラス1階にある「TRASPARENTE」によるフードとスパークリングワインを囲んで楽しい時間となりました。
Nagoya’s Opinion

アッシュコンセプト 代表取締役 / デザインプロデューサー
名児耶 秀美
武蔵野美術大学造形学部卒業、ペア・シュメルシュア(デザイナー)のもとでアシスタントを経て、㈱髙島屋宣伝部、㈱マーナ専務取締役企画室長として、経営・商品開発・プロデュース・マーケティング・デザイン戦略に携わる。2002年 アッシュコンセプトを設立。生活者とデザイナーが楽しめるモノづくりをめざし、デザイナーとのコラボレートブランド「+d (プラスディー)」をはじめ、様々な製品を発信。ジャパンブランド・地場産業振興コンサルティング等も手掛ける。2012年には直営のプロダクトショップ「KONCENT」をオープンし、現在国内外に店舗を展開している。

アッシュコンセプト
代表取締役 / デザインプロデューサー
名児耶 秀美
武蔵野美術大学造形学部卒業、ペア・シュメルシュア(デザイナー)のもとでアシスタントを経て、㈱髙島屋宣伝部、㈱マーナ専務取締役企画室長として、経営・商品開発・プロデュース・マーケティング・デザイン戦略に携わる。2002年 アッシュコンセプトを設立。生活者とデザイナーが楽しめるモノづくりをめざし、デザイナーとのコラボレートブランド「+d (プラスディー)」をはじめ、様々な製品を発信。ジャパンブランド・地場産業振興コンサルティング等も手掛ける。2012年には直営のプロダクトショップ「KONCENT」をオープンし、現在国内外に店舗を展開している。
1969年創業のACTUS。人類が初めて月に降り立ったその年に現代に続く日本のインテリア・ライフスタイルもはじまりました。
ヨーロッパからの情報とインテリアを日本に運び込んだACTUSの存在によりモダンインテリアの歴史が始まり、暮らしが大きく変わってきたこと、また、「志の無い経営は、意味がない」と改めて共感し、過去様々な危機も乗り越えながら、現在の形になったことへの理解を深めました。
創業者の思いが日本の歴史を創り、休山さんがステップアップし、こんな良い形に会社をデザインしてきたのだと感じます。
「日本の人々にインテリアの楽しさを知ってもらいたい。」
「セレモニー2時間、ハネムーン2週間、生活これからずっと。」
「モノを売るのではなく、スタイルを売る。」
「顧客と成長するACTUS」
「日本で一番インテリア好きが働く会社。」
ACTUS Will
またまた、アクタスファンになってしまいました。私も、いや………我々も良い会社を創っていこうと心から感じた講演でした。「パーパス・ブランディング経営」志のある経営はとっても大事ですね。
休山昭さん、お忙しい中ありがとうございました。
名児耶 秀美
1969年創業のACTUS。
人類が初めて月に降り立ったその年に
現代に続く日本のインテリア・ライフスタイルもはじまりました。
ヨーロッパからの情報とインテリアを日本に運び込んだACTUSの存在により
モダンインテリアの歴史が始まり、暮らしが大きく変わってきたこと、
また、「志の無い経営は、意味がない」と改めて共感し、
過去様々な危機も乗り越えながら、現在の形になったことへの理解を深めました。
創業者の思いが日本の歴史を創り、休山さんがステップアップし
こんな良い形に会社をデザインしてきたのだと感じます。
「日本の人々にインテリアの楽しさを知ってもらいたい。」
「セレモニー2時間、ハネムーン2週間、生活これからずっと。」
「モノを売るのではなく、スタイルを売る。」
「顧客と成長するACTUS」
「日本で一番インテリア好きが働く会社。」
ACTUS Will
またまた、アクタスファンになってしまいました。
私も、いや………我々も良い会社を創っていこうと心から感じた講演でした。
「パーパス・ブランディング経営」志のある経営はとっても大事ですね。
休山昭さん、お忙しい中ありがとうございました。
名児耶 秀美