20stories

Vol.01

思考よりも行動。
その積み重ねでたどり着いた“今”。

Vol.01

思考よりも行動。
その積み重ねでたどり着いた“今”。

たまに妻と一緒に趣味のゴルフをやる。その中で感じたことがあった。それは『ブラインド』と呼ばれる、グリーンやカップが見えないコースでドライバーを打つ時のこと。人によっては、キャディさんに「どこに打てばいいの?」などと尋ねる方もいるだろう。しかし答えはひとつ。「前に打て」だけだ。目指すべきゴールが見えなくても、とにかく前に向かって打ってみて、ボールが転がっていった場所へと移動する。そこに立てば、また景色が変わり、これまではなかった新しい情報が入ってくる。そしてまた次にどこに向かって打つかを考える。その繰り返しだ。

経営も同じ。弊社では毎年1月4日に『経営方針発表会』を行い、その1年のテーマを発表している。2022年のテーマは「Let’s act」。考えることが仕事ではなく、行動することこそが仕事であるという意味を込め、これまでもたびたびスタッフに伝えている。また知人から「こんなことを考えているんだけど、どう思う?」といった相談をされた時は、いつだって「考えたのであれば、やってみたら?」「だってやるために考えたんでしょ?」と答えてきた。思考よりも行動。とにかく前に進むことを大切にしてきた。その積み重ねが “今”である。

さて、唐突な始まりとなったが、2002年に産声をあげたアッシュコンセプトが、2022年に20周年を迎えた。そこで創業者である私、名児耶秀美の生涯を振り返りながら、弊社が進めている種々の事業や、その中で大切にしているさまざまな価値観が、どのようなきっかけで、またどういった思いでうまれてきたのかを紹介する連載をスタートさせることにした。

計30時間に及んだライターとの対話の中で、強く感じたことがある。それは60余年にわたる自分の歴史、そして20年という会社の歴史は、“感謝の歴史”に他ならないということだ。いついかなる時も周りの人たちに助けてもらうことで、今の私がいて、今のアッシュコンセプトがある。私自身が「応援したい」と感じた人たちを全力でサポートするために歩んできたが、気がつけば逆に応援をしていただき、支えていただいた人生だったと痛感している。

名児耶秀美近影。KONCENT駒形本店にて。

連載のテーマはスムーズに決まった。デザインは、愛。迷うことなく出てきた言葉だ。私自身、数年前に還暦を超えたものの、人間としての成熟はまだ程遠く、未だに“やんちゃ”をさせていただいている身だと自覚している。しかし『デザイン』に対してだけは、ずっと真剣に向き合ってきた。そう胸を張って言い切れる。

そのように自分の生涯をかけて懸命に取り組んできたデザインを、ひと言で表すならどんな言葉だろう。それを若い頃からずっと考え、また多くの人に質問もしてきた。中には「意匠」や「造形」、また「美術」、「芸術」などと答える人もいたかもしれない。では私にとってデザインとは何か。それは自分のエゴや会社の利益などは二の次にして、使う人のことを徹底的に考え、その人のことを思いながら形にしていく工程であり、自分にとって大切な人に対してとる行動と同じものである。つまりは「愛」と呼んでいいはずだ。そんな結論に至り、これまでも多くの場で「デザインとは、愛です」と説明してきた。

愛。普通はなかなか使わない大げさな表現だ。しかしこれだけ言い続けていれば、今では少しの照れもなく言える。スタッフからは「名児耶さんじゃなかったらNGなタイトルだね」などとからかわれたが、もはや気にならない。

第1号製品+d「アニマルラバーバンド」を手に。創業と同じく発売20周年を迎える。

ではさっそく始めていこう。「20」周年になぞらえ、計「20」回にも及ぶ長い話となるが、ゆっくりとお付き合いいただければ幸いに思う。まず時計を今から60年ほど逆回しにしたところから物語は幕を開ける。

Vol.02に続く

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