さぁ、ついに最終回までやって来た。フィナーレはもうすぐ。締めくくりの話を進めていこう。今回、この連載プロジェクトを通して、改めて自分の人生を振り返ってみた。その中で感じたのは、連載の最初にも書いたが、自分の歴史、そして会社の歴史は、“人への感謝の歴史”に他ならないということに尽きる。例えば、お伝えしてきたとおり『+d(プラスディー)』というブランドは、それまで日の目を見ることが少なかったデザイナーたちにフィーチャーし、彼ら・彼女たちの素晴らしい業績にスポットを当てることで、その活動をサポートしたいという思いで立ち上げた。しかし考えてみると、私自身が、そしてアッシュコンセプトこそが、デザイナーたちに支えられてきたことは明白である。この不思議な感覚と、どれだけ彼ら・彼女たちに感謝しても足りないもどかしさを、20年間にわたって持ち続けている。
節目となるタイミングを迎え、次の目標や今後の展望、さらに自分の“幕の引き方”などについて質問されることが増えた。しかしはっきり言って「まだよく分からない」というのが正直なところである。なんとなく頭の中にある構想はふたつ。まずは長く携わってきた「デザイン」ではなく「アート」の世界に足を踏み入れたいという思い。そしてきちんと海外進出を果たしたいという願いだ。
前者に関して、例えば絵を描くのか、立体をつくるのかなど、具体的には特に決めていない。とにかくユーザーのことを第一に考えて、ビジネスとしての「デザイン」をずっとやってきた自分が、最後には自己表現として「アート」をやってみるのも面白いかもしれないと感じている。後者に関しては、これまで計35カ国にアッシュコンセプトの商品が送り出され、一定の評価を受けてきたという自負もあるが、その一方で「海外で成功した」という実感は得られていないというのも事実だ。実は今、アメリカのとあるエージェントと手を組み、2023年のアメリカの展示会で発表するための商品の開発を進めており、この記事が世に出る頃には、形になっているかもしれない。まだまだやりたいことは尽きないようだ。
私は常日頃から“死”に対する意識を持っている方だと思う。この世に生きるもの全員に平等に決められた最終ゴール、それが「死」。誰もがそこに向かって生きていると若い頃から考えていた。それが故に、例えば使えないほど多くのお金を持ったとしても、また社会的な地位や名声を得たとしても、最後はみんなが死んでしまうのだから、さほど意味はない。ずっとそう思って生きてきた。したがって大切にすべきは数字や量で表せるものではなく、どれだけいい仕事をして、どれだけ人や社会に価値を提供できるかではないだろうか。
挑戦の歴史、そして感謝の歴史はこれからも続きます。今後も “デザインカンパニー” アッシュコンセプトを応援してください。
創業から20年が経ち、小さい規模ながらアッシュコンセプトはいい会社になってきたと感じている。「スタッフ全員が、社長のために働いている」といった企業を数多く見てきたが、弊社においてはまったくそういった雰囲気はない。それぞれが個々の責任のもと、日々の業務に取り組んでくれている。またオフィスに併設されたショールームを見渡すと、これまでに手がけた商品がズラリと並んでいて、そのすべてが自信作だ。そういった観点では、これまで自分がやってきたことに合格点を出してもいいのかもしれない。
しかし「すべてのスタッフが、心から仕事を楽しめているか」といったようなことを考え出すと、即答はできない自分がいる。ポジティブ思考で楽天家であることは自認しているが、もちろん迷いがないわけではない。それでもとにかく前に進む。そう、これからも「Let’s Act」だ。
奇しくも連載の1回目に使った言葉が登場したところで、物語は終幕。この辺りで筆を置きたい。ここまでご愛読いただき、本当にありがとうございました。こうしてまたどんどんと感謝したい人が増えていく人生です。次は展示会や20周年のイベント、また直営店の『KONCENT(コンセント)』で、もしくは東京の下町の街角あたりで、ばったりとお会いできることを楽しみに……。
アッシュコンセプト株式会社 代表取締役
アッシュコンセプト株式会社
代表取締役